辰野町
産業振興課 移住・定住推進室 兼 観光推進室 兼 商工振興係 専門員 野澤隆生さん
■辰野町概要
「ひともまちも自然も輝く、光と緑とほたるの町」と町民憲章にも謳われ、「日本一のホタルの里」としても知られる、人口約2万人の町・辰野町。6月中旬には「信州辰野ほたる祭」を開催し、ゲンジボタルの幻想的な舞を見に多くの人が訪れる。
本州のほぼ真ん中に位置し、首都圏・中京圏にも約2時間半というアクセスの良さに、オリンパスやIHIなど大手企業の主力工場も多い。こうした工場を中心に製造業が盛んな一方、豊かな自然の恵みを活かし、日本酒やりんご、松茸等の特産品もある。
■辰野町の産業の特徴
自然に恵まれた精密工業中心の製造の町
辰野町には、オリンパスの長野事業場やIHIなど大企業の主力工場があり、関連の精密工業を中心に、カメラ・レンズ・業務用機械など、製造業が産業の中心となっています。辰野工場の製品は、「辰野クオリティ」として評価され、海外にも輸出されています。
小さな町ですが海外との繋がりも多く、海外から出張に訪れるビジネスパーソンも少なくありません。
加えて、米・野菜・果樹などの農業も盛んで、全国的に有名な松茸の産地でもあります。松茸の収穫の時期には町内のコンビニエンスストアでも、松茸が都市部の価格の3分の1以下で購入できます。
他にも全国新酒鑑評会でも金賞常連、多くの地酒ファンに支持されている「夜明け前」の小野酒造もあります。
そんな辰野町では、現在「住み続けたいまち 帰りたい・戻りたいまち 住んでみたいまち たつの」を合言葉に掲げ、辰野町を愛する人を大切にし、誰もが住みたくなるまちづくりを目指して皆で取り組んでいます。
■雇用促進・定住促進に向けた取り組み
たつのを体感するコミュニティスペース「おいでにゃんしょ」
(辰野町 地域おこし協力隊 移住・定住の推進 集落支援 村上康介さん)
「辰野町に住んでいる人」「移住したい人」「移住した人」と三者の結びつきを作る場所として、「おいでにゃんしょ」というコミュニティスペースがあります。これは横川渓谷にある空き家を利用したスペースで、家財道具も全て地元の方から頂いたもので、「辰野の生活」をまさに体感できる場所となっています。
このスペースでは月1回、地元の人を先生にして花炭や蕎麦打ち体験、ネイチャークラフトやジビエご飯会など様々なイベントを開催し、町内外、県外から集まった参加者が交流しています。
無料で宿泊もでき、平成27年5月からスタートして今までに延べ50名ほどの方が宿泊し、イベントにも130名程の方にご参加いただきました。
この交流を通じて、移住を考える方に「辰野ってなんかいいな」と感じてもらうきっかけになればと思っています。
すべてオーダーメイド!たつの暮らし体験プラン
さらに、「たつの暮らし体験プラン」として、地元の人と一緒に空き家見学や、スーパーや病院の見学、農業体験、観光、移住者宅の訪問など、参加者の希望に合わせてオーダーメイドの体験プランを用意しています。
「いつでも好きな時に」「見たいものを見たいところだけ」辰野町を紹介させていただきますが、いずれの場合にも、その方の志向に合った地元のキーマンに紹介し、移住希望者の方と地元のキーマンの結びつきを作っています。
地元の人と強い結びつきができ、「あの人がいるから、大丈夫か。」と思えれば移住の心配事はかなり軽減されます。
実際に、就農希望の方が辰野町にいらっしゃった時にも、トラクターを貸してくれる、農作業のやり方も教えてくれるなど世話を焼いてくれる人に出会い、「他の場所も見て回ったけれど、いろいろ世話をしてくれる人がいるから。」という理由で辰野町へ移住を決めた方もいらっしゃいます。
移住を考える方に、「たつの暮らし」をより具体的にイメージしてもらうだけでなく、地元に住む人との結びつきを作ることで、安心して移住できるようサポートしています。
たつの暮らしの実現へ...空き家バンクを推進
地域では空き家が多くなっているため、その空き家を空き家バンクとして登録し、一般的な物件よりも安く契約ができるようになっています。
実際に移住者の定住先としても活用されており、現在7件の登録中3件は契約済みとなっています。
こうした空き家に住む際に、家財道具の処分・運搬費用にも最大15万円、空き家の改修に最大30万円の補助があり、空き家を活用して移住を検討する方を応援しています。
たつので働く...超実践型・学生インターンシップも
さらに、学生の地元企業への「実践型インターンシップ」も推進しています。これは単なる企業体験・職業体験ではなく、本気で経営革新・事業組織の発展を目指していただくもので、KPIを重視し、最長6ヶ月間の研修中に「仮説→実行→検証」を繰り返してもらいます。
学生に本気で取り組んでもらう分、企業の経営者や従業員、地元の方々と本気の交流が生まれます。
今年から始めた取り組みですが、インターンシップの学生の効果で、店舗の売上が6倍になったり、定時で帰っていた社員が学生と共にやる気になって課題解決に遅くまで取り組むようになったりと、業績や社内コミュニケーションで大きな成果を上げています。
「おいでにゃんしょ」や「たつの暮らし体験プラン」、地域おこし協力隊やインターンシップなど、様々な機会を用意して、辰野町をより多くの方に実感・体験してもらいたいと考えています。
■移住者が辰野町を選ぶ理由
「温かい人」「世話をしてくれる人」がいる
辰野町は人がとても温かい町です。地元の人は皆、自分たちの住む地区に愛着を持っていますから、自分が好きな土地を知ってもらいたい、好きになってもらいたいという思いが人一倍あるのかもしれません。
ホームページや説明会ではなかなか伝わりにくいですが、一度来てもらえれば「辰野町の人の良さ」を実感していただけることも多く、実際に何度か様々なイベントに足を運ぶうちにすっかり辰野町のファンになったという方も多いのです。
豊かな自然環境だけど自然災害には強い
山に囲まれた辰野町は地盤が強く、地震などがあまりありません。また、山に囲まれているせいか、大雪や台風の被害もほとんどありません。
豊かな自然環境に、自然農法やオーガニック栽培をやりたいと農業を志して辰野町を選ぶ方もいます。自然に恵まれた環境は利便性とは相反するものになりますが、
「これ以上、寂れさえしなければ、自然を壊す開発がないところがいい。」
「ネオンが少ないのがいい。」
「有名ファーストフード店や、全国的なチェーン店が少ないのがいい。」
とその点に魅力を感じてくれる方も少なくなりません。
■担当者が感じる「辰野町に住む・働く」の魅力とは?
新しいチャレンジを応援してくれる温かさ
辰野は人が温かく、新しいことを何かやろうとチャレンジした時に、協力者が集まりやすい町です。たとえば、辰野町で「おてんとさんぽ」という2日間で8000名ほど人が集まるクラフト展を開催しているのですが、これも地元の有志が集まり、皆が「やりたいことをやろう」という意志で企画・実行されています。
地域の中でやりたいことを提案したときに、それを受け入れてもらえて、応援してくれる人が集まってくる。そんな温かさがあると思います。
家と畑と田んぼと川だけ...「何もない」がいい
(辰野町 地域おこし協力隊 移住・定住の推進 集落支援 村上康介さん)
私はコミュニティスペース「おいでにゃんしょ」の一室に住んでいます。「おいでにゃんしょ」は横川渓谷の一角にあり、周囲には家の他には畑と田んぼと川があるだけで何もありません。でもそれがいいのです。
そもそも辰野町の生活で便利さを求めていませんし、遠くても車で10分の市街地へ出れば買い物にも困りません。それに野菜や果物、お米など近くの農家の方がたくさん分けてくださって、玄関に毎日のように届けてくれるので肉や魚以外は買う必要もないのです。
私は愛知県の豊橋市出身なので、このような近所の方との付き合いは今までになかったのですが、地域の方との触れ合いや、地域作業を通じたコミュニケーションがある暮らしの温かさに、こういうのもいいなと実感しています。
※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。(2015年11月)