コンピュータ・通信機器
VAIO株式会社
代表取締役社長 大田義実 氏
■業界の概要と企業の概要
高いデザイン性とハイスペックな機能で、国内だけでなく世界各国で根強いファンを持つVAIO。
パソコン市場の世界的な低迷からソニーが事業撤退を発表し、2014年7月に1事業部から1つの企業として新たにスタートしてから約1年、同社はインフラ整備の1年を経て、新たな局面を迎えた2年目の2015年6月に企業再建の経験豊富な大田氏を社長に迎え入れた。
強いブランド力と高い技術力、そして経験豊富な技術者。VAIOの持つ強みを生かした今後の事業展開に注目が集まっている。
■事業と強みと今後の展開
技術力を生かしVAIOブランドの復活と新規事業の育成へ
パソコン市場は世界的に右肩下がりです。2015年の世界の年間出荷台数は2億8900万台と前年比6.2%と前年割れし、4年連続の減少となっています。しかし「VAIO Z」「VAIO Z Canvas」がターゲットとするハイスペック市場には、ニッチですが根強いニーズがあり、製品ラインナップを絞った初期の販売戦略は成果を上げています。
今後は市場が伸びている2in1市場を牽引する「VAIO Z」「VAIO Z Canvas」を軸にしたPCラインナップを増やすだけでなく、タブレットやスマートフォンの市場に対しても自社製品ラインナップを増やし、VAIOブランドの復活に注力していきたいと考えています。
また、AIBOで培った開発技術・生産力が注目され、ロボット開発・生産の引き合いも多くあります。すでに富士ソフトから受託生産しているPalmi(パルミー)も好調で、次の機種の開発の案件もあります。
企業の収益力を上げるためにも、既存のPC事業に加え、第2、第3の収益の柱が必要です。そのためにも、今まで培ったPCやロボットの製造技術、製造設備を活用して、IOTやロボット生産、FA(Factory Automation:生産工程の自動化システム)などを新規事業として育てていきます。
着任1週間で良い点と悪い点を整理し社員に発信
今まで2社の経営再建に携わってきましたが、その経験から大切にしているのが変革のスピードです。社長が交代してすぐに目指すべき未来がわかることが、社員の原動力にもなります。
そこで6月に就任直後、社内の良い点と悪い点を洗い出し、数日~1週間でこの良い点と悪い点、わかっていること・いないことを明確にし、何を伸ばし、何をやめて、何をゴールにするのかを社員に発信しました。
まずVAIOの良さは製品のブランド力や技術力、そして何より社員の優秀さと意識の高さです。社内では、私が指摘するまでもなく何が問題かをきちんと認識していました。これはなかなかできません。さらに、努力家も揃っています。この人材力は、今後企業としての自立に向けて大きな力となるでしょう。
一方悪い点は、営業部が社内になかったことです。営業部がないと売り上げに対する数字意識や責任感が低くなるだけでなく、お客様の声が確認できず、市場ニーズへの対応が遅れてしまいます。
IT業界は初めてですが、どんな業界であれ、経営で大切なのは、「良いものを伸ばして、悪いものを直す」と非常にシンプルです。そのためにVAIOでも技術営業部を設置し、社内のエンジニアから立候補を募り営業部隊を強化したり、売上数値を毎日社員と共有し、ビジネスへの参画意識を高めたりすることから着手しました。
業務の幅を広げれば仕事の質が高まる
良いものを伸ばし、悪いものを直すには制度や組織を変革するだけなく、人も変わる必要があります。
だから私は、今後は自分の幅を広げてほしいと社員に伝えています。設計も技術も担当分野だけでなく、営業や新規開拓を行い、外へ出てお客様と話をし、自分の作った製品が何故売れないのか?次は何を作ればいいのか?を知ってほしいと。営業に限らず、例えば専門がソフトウェア開発なら、今後は電気回路設計も知ってほしいと。
お客様の声を聞き、市場のニーズを知り、新たな技術分野に触れるというその刺激が、次の製品に繋がる新たな発想を生むからです。
同じ危機感を持っていた社員も多く、これには多くの社員が賛同してくれました。営業部を新設した際も、設計や生産部門から多くの人が「やりたい」と立候補がありました。こういう姿勢が大切だと思います。
「世界に羽ばたく技術のVAIO」へ。営業と海外展開を強化
今後は「世界に羽ばたく技術のVAIO」を掲げ、PC事業では営業と海外展開を強化していきます。営業はソニーマーケティング株式会社とも協力しながら技術面の説明をカバーし、量販店やBtoB市場など独自の販路開拓にも力を入れます。
VAIOは、デザイン事務所や設計事務所、金融関連などハイスペックなパフォーマンスが求められる市場でニーズがあります。技術営業の投入で、お客様への細かなフォローや説明をできるような体制を作り、ニッチ市場でのシェアのアップを狙います。
また、VAIOは世界各国に根強いファンがいます。特に販売を望む声が強かった米国とブラジルから海外展開を始めますが、今後に関しては東南アジアなども視野に入っています。信頼できる現地パートナーを見つけ、3年後には日本国内と同等の売上を目指していきます。
新規事業でも、IOT、ロボット生産、FAの分野が第2、第3の収益の柱になるべく開発案件が動いています。VAIOの持つ高い技術力を最大限に生かして、新規事業を展開していきます。
朝礼・ランチ・飲み会で...目指すゴールを繰り返し共有
これからは売上よりも収益を重視し、VAIOは3年後にPC事業と新規事業で1:1の収益比率を目標としています。
この目指すべきゴールは、毎週1回の朝礼や、社員とのランチや飲み会の席で繰り返し伝えています。何度も繰り返し、ぶれないゴールであると浸透させることが重要だからです。
朝礼はメッセージが一方通行ですが、双方向のコミュニケーションができるランチや飲み会の席では社員が不安に感じている点や、「これをやりたい」「これが知りたい」という思いを確認しながら、ゴールを共有しているつもりです。
大企業の一事業部から、1つの企業として収益を確立していかなければならない不安は確かにあるでしょう。しかし、それを解消するにはゴールを決めて皆で向かっていくしかありません。社員と双方向にコミュニケーションをとり、必要な修正をしながら、「ゴールを決めてやっていく」ということを社内外に見せていきたいですね。
■求める人材像は・・・
自分の幅を広げたいという意欲のある人
現在のVAIOは中小企業です。人数が少ないですから、業務の幅を広げて倍の量の仕事をこなしていく必要があります。たとえば従業員が400人いても、それぞれが自分の業務しかやらなければ400人分の仕事しかできませんが、1人1人が業務の幅を広げれば600人分くらいの仕事ができる可能性があります。専門以外の経験は無駄ではなく、その経験が専門分野に新たな気づきやひらめきを生み、より質の高い仕事に繋がっていきます。業務の幅を広げて、仕事の質を高める。そんな状態が理想です。
だから技術者でも、セールスエンジニアや海外展開に興味があれば、積極的に担当してもらおうと考えています。VAIOは今、まさに創業期にあります。だからこそ、自分の枠を決めてしまうのではなく、自分の幅を広げたい、専門を生かして様々なことにチャレンジしていきたいという方を求めています。
■ウィルウェイズが語る、エピソード オブ "社長"
豊富な海外勤務経験も持つ大田社長。今まで生活してきた世界各地に比べ、長野県はどうなのか。率直な感想を聞いてみました。
「皆さん自動車通勤なので、勤務後に気楽に飲みに行けないのが寂しいですね。それはさておいても、朝が本当に気持ちいいです。私は毎朝6時に起きていますが、窓から見えるアルプスの山々が本当に美しい。窓を開ければ、ひんやりと澄んだ空気を感じますし、朝起きるのがこんなに気持ちいいと思ったことはないですね。私は営業担当役員でもあるので週に2日は東京勤務ですが、それがなければずっと長野で生活していたいくらいです。」
長野の自然にすっかり魅了された様子の大田社長。そしてさらにもう一つ、大きな違いを感じていることがあるそうです。
「私は東京生まれの東京育ちで、このように早口です。友人知人もそうなので、言いたいことを一気に言う環境でしたが、長野でこの調子で話していたら、『早口すぎて、何を言っているかわかりません』と社員に指摘されてしまいました。話すスピードがかなり違うみたいですね(笑)。」
少々早口な大田社長ですが、早いのは話すスピードだけではありません。6月の社長交代以降、「良いところを伸ばし悪いところをやめる」と社内が変わっていくスピードには、社員も新たなやりがいを感じていることが取材からもわかりました(VAIOキャリアインタビュー参照)。
世界を舞台に、企業の成長と自らの成長を一緒に感じられる。今のVAIOはそんなキャリアビルドができるステージにあります。VAIOが持つブランド力と技術力が、その大田社長のスピード経営のもとで大きな変化を起こしそうな可能性を感じました。
※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。(2015年9月)
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