駒ケ根市
産業部 商工観光課 交流促進室 室長 山本哲広さん
■駒ヶ根市概要
長野県南部、伊那谷のほぼ中央。南アルプスと中央アルプスを臨む、人口約3万2000人の街・駒ヶ根市。駒ケ岳ロープウェイや早太郎温泉郷など、全国から観光客が訪れる観光資源にも恵まれ、市の産業はサービス業が中心。製造業ではケンウッド(現在は移転)の大企業の創業の地でもあり、養命酒の国内唯一の工場もある。
また、全国に2つしかない青年海外協力隊の訓練所があり、外国籍の方も多く、地域住民との国際交流も盛んで国際色豊かな一面もある。
■駒ヶ根市の産業の特徴
豊かな観光資源を背景にした観光サービス業が盛ん
駒ヶ根市には、千畳敷カールや早太郎温泉郷などの他、キャンプ場やスキー場やアウトドアスポーツ体験など豊かな自然環境を生かした様々な観光資源があります。
自然やアウトドア活動を楽しむために駒ヶ根市を訪れる観光客は年間120万人以上と、観光業には市全体で力を入れており、観光業や関連する小売・飲食業などを中心としたサービス業が市の産業の主流となっています。
また製造業は、自動車関連や自動化設備関連業種を中心に、ビールやウィスキーなどの醸造や食品加工業が盛んなことも特色と言えます。
■雇用促進・定住促進に向けた取り組み
(駒ヶ根市役所産業部 商工観光課 交流促進室 山田秀明さん)
「田舎暮らし駒ヶ根推進協議会」で移住を全面的にサポート
駒ヶ根市では、移住支援のために行政と民間企業、移住経験者が一体となった「田舎暮らし駒ヶ根推進協議会」を立ち上げて、今年で5年目になります。この活動では、市が窓口となった三者の連携で、移住希望者に対し、住宅情報の提供や体験談の紹介を行いながら、移住を全面的にサポートしています。
また、都市部からのU・I・Jターンを支援する「ふるさと回帰支援センター」(東京)にも、上記協議会設立当初から駒ヶ根市単独でブースを設置しています。市単独でのブース出展は全国でも少なく珍しいですが、こうした拠点を活用して、駒ヶ根市への移住を希望する方に積極的な情報発信を行っています。
東京、大阪、名古屋...月に1度はどこかで相談会を実施
その活動の1つが「信州駒ヶ根田舎暮らし相談会」の開催です。これは東京だけでなく、大阪、名古屋も含め、月1回はいずれかの大都市で開催しています。この相談会は移住体験者が、「田舎暮らしアドバイザー」として移住者の「生の声」を語るので、移住希望者にとって体験談が聞けて率直な質問もできる機会になっています。
他にも、参加申込者からの事前アンケートで農業希望者が多ければ、農業支援担当者を同行するなど、各所と連携を図ってベストな情報提供を心がけています。
また相談会以外にも、駒ヶ根の四季を週末に体感するイベントとして、「信州駒ヶ根体感プラン」を年に5回開催しています。移住前にその土地の農業や文化を体験できれば、移住に関する不安も少なくなります。そのためにもこのイベントでは、駒ヶ根市を身近に感じていただけるように、夏野菜の収穫やそば打ち経験や、秋の伝統の大御食神社のお祭りの観光などを行っています。
他にも長野県主催のUIターン関連のイベントにも参加し、より多くの移住希望者に情報提供の接点が持てるよう活動しています。
移住者同士の交流会や地域のお祭りがネットワークを広げる機会に
実際に移住していただいた方にも、ネットワークを広げ駒ヶ根に定住していただけるように、移住者同士の交流会も開催しています。
さらに駒ヶ根の伝統である大御食神社や津島神社のお祭りは、お祭りを成功させるという1つの目的に向かって地域の総力が結集します。お祭りは移住者も一体となって参加しますので、地域との交流を一気に深める絶好の機会にもなっています。
移住者の中には、市の公民館活動や区の活動に積極的に参加している方もいて、地域の活性化にも大きな役割を果たしてくれています。
■移住者が駒ヶ根市を選ぶ理由
(駒ヶ根市役所産業部 商工観光課 交流促進室 山田秀明さん)
「豊かな自然の中での利便性のいい暮らし」を実現できる街
南アルプスと中央アルプスに囲まれた、自然豊かな土地ですが、駒ヶ根市は市街地がコンパクトにまとまっているのが特徴です。車で10分圏内に、買い物や飲食、病院などの生活に必要な施設がまとまっているので、自然の中での生活を満喫しながら、利便性のいい暮しが実現できると思います。
こうした環境も背景に、以前の移住者は定年後のシニア世代が中心でしたが、最近は30~40代の子育て世代も増えています。
「新規就農準備校」で駒ヶ根市の様々な農業を事前に体験できる
最近の傾向では、農業を志す若い方が増えているのが特徴です。しかし、実際の農作業や自分の農業への適性がわからなければ、なかなか就農には踏み切れません。そこで移住する前に農業体験ができる、「新規就農準備校」という制度があります。
これは1泊2日で年5回、水稲の田植えや稲刈り、リンゴの摘果や収穫、その他ネギやトマトなど野菜などの農業体験をしていただくもので、自分に農業の適性があるかどうか、実際の作業をしながら確認できます。
こうした制度を利用して、「やはり農業がやりたい」という思いで卒業後にそのまま就農される方もいらっしゃいます。農業インターン制度もありますが、「移住前に、今の仕事を続けながら就農の適性を確認できる」制度があることも選ばれる理由ではないかと思っています。
ワンストップで仕事先から家探しまで全てサポート
市役所の商工観光課の交流促進室では、移住に関するすべてのサポートを行っていて、仕事探しから家探しまで全て当窓口で、平日・土日休日問わずにワンストップで対応しています。
たとえば、移住希望者の方から「駒ヶ根市で転職したい企業リスト」を頂き、その企業での面接をアレンジしたこともありました。また、東京で今年5月に開催された相談会に参加した方が、6月の土日に「家を探したい」とご希望だったので不動産会社と連携して案内し、この7月の引っ越しが決まった方もいます。
移住で最も不安となり負担となるのが、「仕事探し」と「家探し」です。そこで、その不安や負担を極力解消できるように民間企業と連携して、仕事先探しや家探しを支援する体制を整えています。
■担当者が感じる「駒ヶ根市に住む・働く」の魅力とは?
移住者を「仲間」として受け入れる温かい人間性
駒ヶ根市には、外から来た人に意識して声をかけてくれる、面倒見の良い風土があると思います。私も市内への引っ越し経験者ですが、その時もその土地で「よそ者」の私を、最初から「仲間」という意識で受け入れてもらい、温かいなと思いました。
地方の近所づきあいというと、地域活動への参加を強制されるようなイメージがあるかもしれませんが、決して押しつけはなく、「気にして声をかけてくれる」というちょうどよい距離感があります。
これには、企業誘致で駒ヶ根市に事業所を設けていただいた企業からも、「駒ヶ根の人はよく働いてくれて、人がとても温かい、優しい。」というお言葉を頂いております。
私も若い頃は、「東京っていいな。面白そうだな。」と思っていました。しかし生活する場所という点で考えると、豊かな自然環境の良さとそれを上回るような人の温かさがある駒ヶ根市は、とても魅力的だと思っています。
※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。(2015年7月)