新聞
株式会社新建新聞社
代表取締役社長 三浦祐成 氏
■業界の概要と企業の概要
建設、林業業界向けの専門誌としてスタートし長野から全国に向け情報を発信。「建設」「住宅」「防災」と3つの専門分野を持ち、長野・東京の両本社体制で、専門紙や書籍を発行する新建新聞社。
「地域」を軸に「読者に貢献できることは何か」を追求し、従来のメディア領域にとらわれない事業を展開している。
■事業と強みと今後の展開
「長野」という地元があるからこその「地方目線」が強み
安倍政権が「地方創生」を掲げるなか、世の中の風潮も地方に目が向き始めているのを実感しています。僕たちは全国へ情報発信していますが、長野という地元があるからこそ、「地方目線」のリアリティさがあります。
僕自身も「地方の中小企業の経営者」ですし、その立場からの視点で地方や地方の暮らし、中小企業経営者を見ることで、行間にもリアリティがにじみ出てくると思います。
地元を持ち、地方の読者と同じ目線で語り合える。東京に本社があり、東京目線で情報発信しがちな全国媒体が多いなか、この「地方目線」が僕たちの大きな強みと捉えています。
建築、住宅、防災。3つの専門分野を武器に
また、業界専門メディアは、単一の専門しか持たない企業が多い中、弊社では「建設」「住宅」「防災」と3つの専門分野があります。そのため各分野から「これからの地方をどうすればいいのか」を提示できますし、これらの分野を複合したより立体的な提案も可能です。
さらには、各分野で培った知識がありますので、今後は業界向けだけでなく生活者にも情報を発信していくことも考えています。
3つの専門分野を持っている。その切り口から地方を考えていける。この強みに、今働いているスタッフも、自分たちの存在意義を明確に感じてもらえていると思っています。
会社の転機となった2つの大震災
今年は阪神淡路大震災から20年ですが、この大震災と後の東日本大震災が弊社にとっても大きな転機となりました。
20年前、弊社では初の全国メディアとなる「新建ハウジング」のコンセプトを模索していました。震災後の被災地の状況から、当時は「木造住宅は震災に弱い」「やはり大手メーカーの鉄骨の家でないと」という風潮でした。
しかし木造住宅の7割は地方工務店が施工しており、この風潮は地方工務店には厳しいものでした。そこで「日本の木の家と、木の家を建てる地方の工務店を応援する」ことに特化した新聞を作るべきじゃないかと、はっと気づいたのです。こうして、模索していた「新建ハウジング」のコンセプトがまとまりました。
2つめの転機は東日本大震災です。その頃は、「新建ハウジング」の知名度も売上も住宅専門紙としては全国でトップに成長した反面、存在意義や今後の方向性が見えにくくなっていました。
そのときに東日本大震災が発生し、「何のために新建ハウジングがあるのか」「何のために自分がいるのか」を強烈に再確認させられました。
当時、一番早く情報を発信できるのはWEBだったので、被災地の住宅業界で困っていることをWEBで発信していきました。被災した工場からいつ建材が出荷できるか。どの場所でボランティアの手が足りないか。そんな情報に地域の方から、「とても役に立った」という感謝の声をいただきました。
この経験で、「貢献ってこういうことなんだな」と実感したのです。それから以降は、「貢献」ということを軸に紙面構成や会社の経営を考えるようになりました。まだまだ試行錯誤ですが、ここがどれだけ業界に、その先の生活者に、そして社会に貢献できるかが、メディアの存在価値だと思っています。
編集部の枠を超えて、全社でスキルアップを
記事の書き方は自分で学んで、というのがマスコミ業界の常ですが、教育や研修を求めてギャップに苦しんだ若いスタッフもいたと思います。
弊社でも今では、皆で若い記者を育てようという意識になってきています。そして、記事の書き方や営業手段を標準化しようという動きが社内にでてきました。
そのためにまずは各媒体編集部の枠を超えて、委員会制度を作り、今までなかった横の交流を始め、会社全体でのスキルアップを目指しています。効果はまだわかりませんが、まずは仲良くなり、情報共有することから始めようと思っています。
「脱・専門紙」で従来にない領域にチャレンジ
今後は、従来のメディア、メディア領域、そして業界だけの発信にこだわらず、「脱・専門紙」を掲げ、専門メディアのタブーにも挑戦し、従来型メディアから脱することを考えています。
それに向け、今までは3つの専門領域で成り立ってきましたが、それを「地域」という概念で統合し、全ての媒体の方向を重ねていきます。その意味では、今の「地方創生」の流れは追い風になるとみています。
特に「地元・長野を元気にするために何ができるか」をテーマに、イベントなどの形で読者の皆様と一緒にリアルに長野の街に入っていき、そこで得た経験や見えてきた課題を記事にしていけたらと。
またこれからは、発信する媒体は、紙、WEB、メルマガ、講演と何でもいいと思っています。どんな媒体をつかっても「貢献」ということを軸に、長野で成功モデルを作り、それを「長野モデル」として全国に発信していきたいですね。
■求める人材像は・・・
「自分の書いた記事で世の中を変えてやろう」そんな正しいエゴを
求めているのは、「正しいエゴ」を持っている人です。エゴと聞くと悪いイメージがあるかもしれませんが、この仕事はエゴがないとできません。
ここでいうエゴは、「自分の書いた記事で世の中を変えてやろう」とか「ちょっとでも世の中をよくしたい」という思いの強さです。こういう思いがないと、人の心を動かすような記事は書けません。
編集長になるような人は、この正しいエゴを持っています。仕事は、まず自分の欲を満たしたいという思いが必要で、仕事でエゴを満たすことが「対価」だというくらいでいいと僕は思っていますし、そういう価値観の人間が社内でも活躍しています。
自分で問題意識、当事者意識を持って、感じたことをどんどん発信していく。理想は自分でどんどん企画してメディアを立ち上げる、「一人一媒体」「全員編集長」だと思っています。
「この問題を解決できるのは俺だ」。それくらいの気概を持ってできればいいですね。
地方根性のある人が来てくれればいいなと思っています
繰り返しですが、弊社が会社として存在する理由は、「地方を元気にする」「地方で暮らす人を豊かにする」ということです。それを忘れて「ウケればいい」という記事を書いても、誰からも必要とされなくなってしまいます。
地方拠点だからこそ、地方の側に立って、普通の人の視線で発信していけることが他の媒体との差別化にもなっていきます。
その点でも、地方根性の人が来てくれるといいなと思っています。住むのは地方で、発信するのは全国に、ということに魅力を感じてくれる人には向いていると思いますよ。
また、当社はメディアとしては珍しく?人間性のいいスタッフばかりで、アットホームな雰囲気ですが、それも地方企業だからこそかもしれません。
■ウィルウェイズが語る、エピソード オブ "社長"
小学生時代から、教科書の隅に「理想の家の間取り」を描き、国語が得意だったという三浦社長。天職と思って選んだ新建新聞社で、入社当時の仕事は営業だったそうです。
「だから、営業の頃は記事を書きたくて仕方なかったんです。でも今にしてみれば、営業を経験してから記者になって本当に良かったと思っています。
記者だと先方もいいところを見せようとしてくれますが、営業は自分からアピールして、相手のいいところを探していかなければなりません。この仕事は、営業経験があるのとないのでは、全く違うと思っています。」
自分で問題意識、当事者意識を持って、感じたことをどんどん発信していく。その発信で世の中をちょっと変えられるかもしれない。メディア領域だけでない事業展開をする新建新聞社だからこそ、営業でもそれが可能になってくるのだと感じました。
※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。(2015年1月)
そんな株式会社新建新聞社で働く社員の・・・
新建ハウジング事業部 営業チーム 課長 太田達也さん |
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