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トップインタビュー信州

ホテル・旅館

有限会社ホテル昭和園(ホテル椿野)

代表取締役  湯本秀明 氏

■業界の概要と企業の概要

近年外国人観光客が増えている注目の観光地・湯田中温泉。ホテル椿野は、その湯田中温泉でも「1番きれいな建物」と口コミされる、ノスタルジックな雰囲気漂う洗練されたホテルだ。

レトロモダンな館内では「大人の隠れ家」をコンセプトに、日本旅館ならではの情緒性とホテルの快適さを持ち合わせたサービスを提供。

「Nothing No」の精神で、お客様に「No」といわないサービスは国内外の利用客から、「今迄泊まった温泉ホテルの中で、1番従業員の方の気配りがすばらしい」と高い評価を得ている。

■事業と強みと今後の展開

湯田中エリアは外国人観光客が増えている、将来性のある観光地

山ノ内町の温泉街でも、湯田中エリアは比較的新しい温泉街です。200年の歴史のある萬屋さんのような旅館もありますが、当館は昭和34年から旅館業をスタートしました。

湯田中エリアが最も栄えたのは、志賀高原と草津高原ルートが開通した昭和30年代後半です。その後、時代の変遷とともに旅行の志向が団体旅行から個人旅行へと変わり、全国的にも温泉旅館業界は厳しい時代になりましたが、一方で外国人観光客の増加という明るい兆しもでてきています。

特にこの湯田中エリアは地域全体で、戦略的に外国人観光客(インバウンド)の取り込みに着手しています。スタートして3~4年ですが、今後も集客を伸ばせる可能性と手ごたえを感じています。

学生にもよく話をしていますが、ホテル・旅館業で働くならエリアが非常に重要です。その意味で、湯田中エリアは外国人観光客が増えて、将来性があることが大きな強みなのです。

地域全体で世界へ情報発信。英語対応の飲食店も増加し滞在型の地へ

地域としてインバウンド増加への取組みとして強化してきたのが、インターネットでの情報発信です。今は、ネットを活用した個人のリサーチが増え、ネット上の口コミが集客に大きく影響します。当館でもネットでの情報発信は力をいれており、現在約130の評価サイトに登録しています。

例えば、外国人観光客が最も参考にする旅行情報サイトに、「トリップアドバイザー」があります。このサイトの「優秀旅館表彰」では、全国から選出された125軒中5軒が山ノ内町の旅館です。こうした評価から、海外から湯田中エリア全体への注目が高まってきました。

その結果、かつてはスノーモンキー(地獄谷の猿)が目当ての1泊の滞在が多かったのですが、最近は連泊する外国人観光客が増えています。湯田中は駅からすぐ温泉街なので、活動拠点として使いやすく、ここから草津温泉や黒部ダムに観光するというスタイルが広がっているのです。

また、湯田中の飲食店ではラーメン屋、すし屋、居酒屋等で英語のメニューがあったり、店主がちょっとした英語を話せたりするので、地域全体として滞在型の観光に対応できるようになっています。

今は、3泊ぐらい滞在して街を散策している外国人観光客の方もよく見かけます。滞在型のお客様を増やしていく余地は、まだあります。その意味でも、明るい話題のあるエリアだと考えています。

「椿野倶楽部」で独自のファン顧客の囲い込みへ

もちろん注力しているのは、外国人観光客だけではありせん。当館独自の施策としては、オープン当初から、「椿野倶楽部」としてレディース会員を募っています。

新規のお客様の開拓は、旅行代理店経由だと手数料のコストも大きいので、独自のルートでファン顧客を増やしていく必要があります。そのための独自の施策として始めたのが、この「椿野倶楽部」でした。

この「椿野倶楽部」ではターゲットを中高年の女性客とし、平日でも利用していただけるよう会員ならではの限定プランや特典などを用意しています。今では会員数も3000名以上となり、会員の方の利用で売上の15%を占めるようになっています。

こうした仕組みも活用し、会員特典を充実させながら、会員のファン顧客の拡大に努めていきたいと考えています。

方針やデータを共有し、自ら考えて働けるように

人材育成についても様々な取り組みをしています。新入社員研修はもちろんですが、他にも経営情報の共有として、経営理念からサービスマニュアル、「椿野フィロソフィー」やすべての経営データを含んだ100ページ程の冊子を作成し、意識を高めるためのツールとして、全員に1冊ずつ配布しています。

方針やデータがあれば、自ら会社の状況について考えられるようになります。ただ働かされているのではなく、これによって社員が自ら考え動くような状態にしたいと思っています。

勉強会やロールプレイ、英会話レッスンに宿泊支援と様々な学びの場を

他にも月に定期的に、外部コンサルティング会社による接客指導の勉強会や、ロールプレイングの機会があります。

さらに今年は、英会話教室も開催してきました。今年のお正月に社員に目標を聞いたところ、英会話レベルアップへの希望が多かったので、月に3~4回、社内で英会話のレッスンを行っています。費用は会社負担で、個人も月2000円だけ負担し、全て出席したら会社が全額負担することになっています。

また、いいホテルや旅館など勉強になる施設に宿泊した場合は1泊2万円まで会社で補助を出しています。いいサービスを知らないと、いいサービスを提供することはできません。今は利用が少なくて残念なのですが、こうした制度を利用して、ぜひ様々な接客を学んでほしいですね。

来年には、社内の宿泊体験も強化する予定です。自分の宿泊施設を、お客様の視線で見ることも大切です。ご両親を連れて、お客様として職場に泊まる。その経験で、お客様目線でサービスや設備を見直す機会を作っていきたいと考えています。

日本一きれいな旅館を目指して

当館では、「日本の旅館で一番を目指そう」ときれいな旅館を目指して、環境整備にも力をいれています。環境がきれいになると、「何かを探す」という手間や時間も減るので仕事もスピードアップしますし、整理整頓が習慣づくとお客様の細かな変化に気づくようになります。

館内の掃除や整理整頓の徹底はもちろんですが、今年は従業員食堂も改装することにしました。ここは私自身が掃除する場所の1つとして、毎日磨いていく予定です。

自分たちが休む場所が、ピカピカになっている。そしたら、お客様のための館内はもっとピカピカにしなければ、と意識も変わっていきますよね。その状態を目指して、私も頑張って毎日従業員食堂の掃除をしたいと思います。

今後は運営と所有を分離。頑張れば社長になれるホテルへ

旅館業は家業として、オーナー一族が経営に携わることが多いですが、当館では今後、運営と所有の分離を予定しています。これによって、優秀な人材、社員として頑張ってきた人が社長になれる体制を整えていきます。

どんなに頑張っても最終的には社長になれない、ではなく、頑張ればトップに立てる。そんな夢を社員にも見せたいですし、またそれくらい上を目指してほしいと考えています。

■求める人材像は・・・

従業員と会社がお互いに支えていける存在になれれば

求める人材は、心根の優しい方、そして素直な方です。ハートが優しい方、素直な方がこの仕事で伸びていきます。

例えば40歳で中途入社した方がいます。彼女は、自分が忙しい時でも、必ず周りに気を配り、休める時間でも休まずに、もっと忙しい人に手を貸してくれます。サービス業の根っこは、この仲間に手を貸したいと思う、優しい気持ちが大切なんです。

人生の中で一番長いのが、仕事をする時間です。仕事の中に人生がある、と私は思います。だからこそ、仕事や会社を通じて社員が磨かれていくような会社にしていきたいですね。

■ウィルウェイズが語る、エピソード オブ "社長"

湯本社長は、ホテル椿野に入社する以前に、東京の旅行代理店で2年程働いていたそうです。当時の様子を伺うと、驚くような激務だったそうです。

「10人くらいの会社で、30億円の売上がありました。1人年間1億円売れば優秀な営業と言われますが、それが3億円ですよ(笑)。ほとんど休みはなく、朝6時前に出社して夜は10時まで仕事です。

ものすごくハードでタイトな環境でしたが、だからこそ、反面教師になったというか、働く環境について考える機会になりました。」

そんな過酷な経験が、社員から「気軽に相談できるお父さんみたいな存在です」と慕われる懐の深さに繋がっているのかなと感じた取材でした。

※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。(2014年12月)

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