アパレル(メーカー)
株式会社グローバルユニット
代表取締役 小林昌良 氏
■企業概要
長野で生まれ、今や世界20か国で販売されている「メイド・イン・ジャパン」ジーンズの代表ブランド「ザ・フラットヘッド」。
ヴィンテージの古き良き"ものづくり"の手法に、現代の技術を用いることで、ヴィンテージを超えるプロダクツを作り出す。そして、日本人ならではの見えない細部に1ミリ単位で宿る、"ものづくり"へのこだわり。さらにファッションだけでなく、多くの男性が子供のころから憧れる車やバイクをファッションと融合させ、ライフスタイルを提案する。その世界観が支持され、20年足らずでアメリカンカジュアルのカリスマ・ブランドとして世界的に確固たる地位を確立した。
他にも、「スーパーウィークエンド」のイベントの開催や、「ミス・ユニバース・ジャパン長野大会」「ミス日本酒長野大会」の運営事務局なども行っている。
■事業と強みと今後の展開
今や日本のジーンズの品質は世界一。
そして「ザ・フラットヘッド」は日本一のジーンズ。
今、日本のジーンズは世界でも売れていて、高く評価されています。デザイン性はイタリア製などが人気となっていますが、品質は間違いなく日本が世界一。その日本製ジーンズの中でも、「ザ・フラットヘッド」のジーンズへのこだわりは、世界一なんです。
欧米にはもともとジーンズ文化があるので評価していただいていますが、アジアでも販売数が伸びています。その中でも今一番熱いのはタイです。タイでは、ジーンズ1本が現地の大卒初任給ぐらいの価格になりますが、それでも皆お給料を2~3か月分貯めて購入してくれます。イベント限定モデルを発売すれば、開始10分で100本が完売します。バイクを買うような感覚で、ジーンズを買い、愛用してくれる。そんなファンが多くいるのです。
ジーンズ1本が完成するまでに縫製工場7軒が縫製。
誰もマネできない作りに。
僕たちのブランドは「本質」を売っています。だから、これだけコピーが出回る時代に、決してコピーができません。細部へのこだわりが多いので、コピーなんてできないのです。
たとえば、ジーンズは岡山の工場で生産しています。みなさんの想像する工場は、おそらく200人とか300人という大きな工場で生産するイメージがあるかもしれませんが、「ザ・フラットヘッド」の場合は違います。家族で経営するような小さな縫製工場を7軒経て、完成させています。それは、ポケットはポケット、股は股というように1か所1か所それぞれに強い"こだわり"があるため、大きな規模の工場では、なかなか従業員の方1人1人までその思いが伝わることが難しく、そこまでの要求に応えてもらうことが難しいためです。この熱い思いを共有して「ザ・フラットヘッド」にしかできない"ものづくり"を実現するために、私たちは熟練した職人さん達にお願いをしているのです。
また、Tシャツの縫製に関しても、僕たちの要求に応えてくれる工場を見つけるまで14軒探し歩きました。それは、どの工場も不可能だと言っていたネック部の20番綿糸による3本針縫製。丈夫なポリエステルの糸を使わず、あえて天然素材のコットンの糸を使って縫製をし「着ている方の体に馴染んでいく、そんな製品でありたい」という私たちの思いがあるから、あきらめずに実現させました。
今は多くの分野で海外生産が進み、「安くいいものを。見た目だけよく」という価値観が定着してしまっていますが、僕たちの"ものづくり"はそうではありません。
たとえば以前、「工賃これくらいで」と、ある縫製をお願いしたことがありました。それが「これだけのコストでできました」と仕上がってきました。大量生産ではないのに安く仕上がった理由を聞いたら、「見えないところだし、強度も見た目も問題ないから」と、「2巻半」必要な工程を「2巻」にしていたのです。
よかれと思ってやってくれたのですが、それは「少しでも安くて、見た目がいいものがいい」という価値観が根強くあるからなんですね。
僕としては、そうではなくてもっと払ってもいいから、より長持ちするように3巻でやってくれるほうが嬉しいわけです。
工程を省いて安くすることが美学であり、技術になっているところを、「メイド・イン・ジャパンだからこそ、ちゃんとやりましょうよ!」と話をする。僕たちの"ものづくり"は、そこから始まっています。だから、誰にもマネができないのです。
「メイド・イン・ジャパン」の"ものづくり"へ
今でこそ「メイド・イン・ジャパン」の服作りをしていますが、昔は「メイド・イン・USA」が世界一だと思っていました(笑)。僕は1950年代生まれ。戦争から解放され、華やかで輝いていた1950年代のアメリカ文化に対する憧れが強く、"ものづくり"もアメリカが一番だと思っていました。
そして最初は、西海岸に行ってスウェットやジーンズを作っていたのですが、完成に2センチくらい誤差があるんですよ。でもそれくらいの誤差は現地では全く問題なく、「そんな細かいことを言っていたら商売はできない」と言われました(笑)。
だから、それなら日本のほうがいいものができるのではと、「メイド・イン・ジャパン」に辿りついたのです。ただ日本製なら何でもいいというわけではありません。「日本でしかできないこと」をやれば、いいものができるという話なのです。
では「日本にしかできないこと」は何かというと、例えば日本の「匠の技」と、イタリアの「クラフトマンシップ」の違い、わかりますか?
「クラフトマンシップ」は、王侯貴族のために発展していった技で、「いかに見た目をかっこよく褒められるようにするか」を目指して発展した技術です。
一方、「匠の技」は、履いた人が履きやすくて、長持ちするようにと、「使う人」のことを徹底的に考えて発展した技術です。日本人は更に、その工程のなかで、「自分がこう仕事をしたら、次の人が仕事をしやすいだろう」と考えて仕事をします。これは日本でしかできません。ここまで思いやりをもって作るから、日本では世界最高の"ものづくり"ができるのです。
通販もセールも衣装貸しもしない、ブランド作りへ
僕たちが作るのはこうした思いを込めた服です。だから、通販もセールも20年間行っていませんし、今後も行う予定はありません。
その原点は古着屋時代にあります。当時僕は、古着を全部自分で修理していました。サイズも徹底的にこだわって、XやLしかない時代に、SやMと日本人に合うサイズの古着を揃えました。ネルシャツの補修のために100色位の糸を用意し、穴あきを全て自分で直しました。クリーニングも自分でして、柔軟剤だけはお金をかけました。
だから古着は、知らないお客様から「なぜ新品がこんなに安いの?」と言われるほどの状態でした。
すべての商品に徹底的にこだわって愛着を持っていたので、通販では売りたくなかったのです。見にきて、話を聞いて買ってもらいたい。「古着は皆同じ」じゃなくて、僕の古着は違うんだと。その思いが今でも続いているのです。
「ザ・フラットヘッド」の服は、著名人の方も着てくれるようになりましたが、問合せがあっても絶対に衣装貸しはしません。その代わり、「気に入ってくれたのなら、ぜひ千曲市にある本社に世界観を見にきてください」と言っています。
本当に好きになったら、一度来て一緒に話しをし、ブランドや私たちの考えに共感してもらう。僕たちは、長野生まれ、田舎発のブランドです。時間をとって、都会からわざわざ長野まで足を運んでもらうので、私たちも最高のおもてなしでお迎えします。そうすることで深いコミュニケーション、結びつきができるという都会にはない、田舎のメリットを活かせますから。
生産者の方が儲けてヒーローになる。
"ものづくり"の技術が受け継がれるように
また、"ものづくり"で1番に考えているのは、縫製・裏方の方にしっかり儲けていただくということです。安い"ものづくり"は、どこかに必ず無理があります。それは大抵、家内工業の縫製や裏方にしわ寄せがきているのです。
家内工業の現場では、息子が「絶対に親父とおふくろの跡は継がない」と言います。一生懸命働いても、月末にはお金のことで喧嘩するような仕事はしたくないと。当然ですよね。
僕たちはそういうことはしません。技術を上げて、お願いすることをしっかりやってもらう代わりに、工賃をしっかり出し、ちゃんと儲けてもらっています。
さらに、技術を上げたら本や雑誌に登場してもらっています。「匠の技」「日本の職人」として、「ヒーロー」になってもらうのです。そうするとそれを見た若者の中から、「かっこいいな。俺もやりたい」と後継者が出てきている生産工場もあり、現在の後継者問題の解決に向かいつつあります。
僕はこのブランドを300年続くブランドにしたいと思っています。そのためにも、若い人に日本の職人の技を受け継いでほしい。この仕事はかっこいいと思ってほしいのです。
こうした"ものづくり"をしていたら、こだわりを持った職人さんたちから「フラットヘッドと仕事をさせてほしい」と声をかけてもらえるようになりました。細部までこだわってきたからこそ、こだわった人たちが集まってくる良い循環が生まれつつあります。そして私はこの長野で生まれ育ちました。地元がもっと活性化すれば良いと思っているので、いつかは、「メイド・イン・ジャパン」から「メイド・イン・長野」になるようにしていきたいと思っています。今は、レザークラフトやTシャツの縫製などは長野にシフトしていますので、今後もそうしていきたいと考えています。
さらに将来的には、千曲市で雇用を創出する仕組みを作りたいと考えています。千曲市が、レザークラフトやアメカジ、ジーンズの街と言われるようにしたいですし、そこから雇用を生むという形で地域貢献に結び付けて行きたいですね。
■求める人材像は・・・
会社といい恋愛関係を作ってください
社員には、この会社といい恋愛関係を作ってほしいと思っています。会社で取り組んでいることや商品が好きでたまらない。だから商品だけでなく、掲載された記事や運営するレストランのこだわりについて、友達や家族にその良さを伝えたくなる。そんな姿勢が大切なんです。
たとえば、会議でもダメな人は、売上が落ちた原因を「新規顧客の減少と、客単価の減少」と報告します。それは結果であって、原因ではありません。そうなったのはなぜか?を考えてほしいのです。
自分の周りの人に「会社や商品の良さ」を伝えられていたら、そこに人は行きたくなり、人が集まってきます。それが「新規顧客」になるわけです。もちろん、語る場所は店だけではありません。24時間、どこでも語れる。どこでも営業できる。お客様はそうして作るものですし、今活躍している社員も、そういった社員ですね。
またこれだけの"ものづくり"をしているので、お客様が来た時もただ売って終わりではありません。販売スタッフには、僕たちの取り組みやライフスタイルなど、この世界感を伝えて、話をしてほしいと思っています。
その意味でも、好きなことを語らずにはいられない、そんないい恋愛関係になってほしいなと思っています。
■ウィルウェイズが語る、エピソード オブ "社長"
多くのメディアに登場し、「アメカジのカリスマ」的存在でもある小林社長。タイのバンコクでは、小林社長の説明会とサイン会になんと200mくらいの行列ができるそうです。
取材中も"ものづくり"へのこだわりと勢いのある語り口調に、つい引き込まれてしまいました。それもそのはず、かつては損害保険の営業としてなんと月に車200台分!の契約を獲得していたとか...。
「ジーンズなんて形があるから簡単ですよ(笑)。以前は、形のないものを扱っていたので自分を徹底的に売り込むしかありませんでした。そこで相手に拒否反応を示されないようにする技術を、徹底的に磨きましたね(笑)」
と語る小林社長の接客はすごいです。たとえば、店のハワイアンシャツ。3~5万円します。
「これ普通なら値段みた瞬間に『え?』と思うでしょう。そして店員が行けば『来るなよ』って思います。思いっきり警戒するわけです。
そこで僕の場合は、『いやーハワイアンっていいですよね。でも僕の場合は夏には着ない。秋から春にかけて着るんですよ』という話をします。すると、『この人何言っているんだ?』って警戒心がなくなってくるでしょ?(笑)」
人の心理をよくわかっていらっしゃる小林社長。ちなみに、この後のセールストークを聞いたら、すっかりハワイアンシャツの魅力の虜になっていました。
小林社長は何を語ったのか?敏腕セールストークが気になる方も、ぜひお問い合わせください。
※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。(2014年11月)
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長野店 店長 橋本博文さん | ![]() |