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トップインタビュー信州

建設

株式会社岡谷組

代表取締役  野口行敏 氏

■業界の概要と企業の概要

大正9年に創業し、平成22年には創業90周年を迎えた岡谷組。岡谷市を中心に長野県内各地で土木工事や公共施設の建築を始め、個人住宅の建築やリフォーム、太陽光発電設置なども手掛ける。

老舗企業ならではの地域貢献として、岡谷市で自然災害が発生した際にはいち早く対応。土砂災害や積雪災害時のノウハウ、経験知は、各協議会を通じて「地域の知恵」として共有され、活かされている。

こうした実績をまとめ、国交省関東地方整備局から「災害時の基礎的事業継続力」の認定事業者にもなっており、地域からの信頼は非常に厚い。

■事業と強みと今後の展開

仕事の需要が増加する一方、人材不足が深刻な問題に

アベノミクスの影響で、建築業界の一部上場企業は潤っていると思います。しかし、我々中小企業の現場では、職人不足で仕事が取れないということも起きています。現場の職人不足は深刻な問題で、これは東南アジアなど海外から人材獲得すればいいとか、そういう問題ではないと思っています。

今はオリンピック開催もあり、仕事の需要は増えています。しかし長野オリンピックの時のように、この需要はオリンピック終了後に必ず「谷」が来ます。その時までに、いい人材、いい現場代理人を確保できているかどうかが重要になってくるでしょう。

蓄積された公共工事のノウハウが強み

弊社は総合建築業ですが、主力事業は公共の土木工事です。また、建築事業でも公共施設の案件が多いので、社内には公共工事へのノウハウが蓄積されています。

これらの公共事業は、提出書類が多いのが特徴です。さらに現場管理についても役所の仕様書に沿った対応が望まれます。この書類作成や役所対応も技術と経験が必要で、一朝一夕にできるものではありません。こうした公共工事に関するノウハウが、弊社の強みだと考えています。

災害発生時の対応の経験もまとめて、緊急時に活かせるように

また、昔からこの地域で土木・建築業を営んでおりますので、岡谷周辺地域での災害対応も数多く行ってきました。

災害時には予想不可能なことが多く起こります。そして災害地以外の現場では、通常の工事が進んでいるので、復旧のための重機や人員をどう確保するかが大きな問題です。いざとなれば、携帯電話も使えなくなるので、連絡手段の確保も重要となってきます。代替手段の無線1つとっても、富士見町とは繋がっても峠を越えた塩尻市とは繋がらない、ということも起きるのです。

こうした経験を踏まえ、災害時にどのような対応をして事業を行うかをBCP(事業継続計画)にまとめ、平成21年には「災害時の基礎的事業継続力」の認定事業者となりました。

ただ希望的プランを机上で練ることはいくらでもできますが、実際にはそううまくいかないことも経験しています。だからシミュレーションを定期的に行い、「連絡だけはきちんと取れること」を意識しています。連絡が取りあえれば、なんとかできる。それを多くの経験から、実感しているからです。

人材育成は、家族のように育て、付き合い、向き合って

案件獲得のためには、いかに経験がありリーダーシップのある現場代理人がいるかが肝なので、人材育成は重要な課題と認識しています。さらに新しい技術が次々に生まれ、労働関連や建築関連の法律も次々に変わるので、1人1人がそれにキャッチアップする環境づくりも必要と考えています。

そこで弊社では、社員同士がまずは情報共有する機会を意識して作っています。連絡会議や勉強会を最低でも月に1回は行い、違う現場で働く社員が顔を合わせ、技術・経験・ノウハウ・失敗を継承する場にしています。また、昨年から新人研修だけでなく入社10年目の中堅社員向けの勉強会も始めました。

社員は家族と同じです。自分なりのパフォーマンスを発揮してもらうためにも、家族のように育て、付き合い、そしてパフォーマンス発揮の場を作っていきたいと考えています。

今後は採用を毎年続けて、継続的な人材確保を

現場の高齢化が進み、社員と職人が引退して減少することが予測される今、人員をいかに維持できるかが事業継続の鍵になってきています。多くの中小企業が抱える人材不足の問題は、バブル崩壊後に人を採用しなかった結果でもあるので、今後は毎年採用を継続して行っていく予定です。

今はスーパーゼネコンが職人学校を作るほど、建築現場での若手人材不足は深刻です。弊社でも採用するだけでなく、充足感や成長感を感じられる仕事ができる現場を提供し続けることで、長くしっかり育てていきたいと考えています。

■求める人材像は・・・

「これがやりたい」その思いがある、馬力のある方に

どんな業界でも同じだと思いますが、「これがやりたい」と思い続けることが大切です。「こういうのを作りたい」と、その思いが強ければどんな状況でも勉強し続け、新しい技術にも興味を持ち続けることができます。そんな思いがある方に、ぜひ入社してほしいと思っています。

社内には「こういうものが作りたい」とバカみたいに思いが強い社員が多くいます。そして周りにも同じような仲間がいるからこそ、情報交換したり刺激し合ったりしてその思いを持ち続けることができます。いい仕事をし、自分を成長させていくためには、これが大事なことだと思いますよ。

もちろん、男女は問いません。弊社には女性の現場代理人もいます。女性が仕事を続けていく上で、出産育児の時期をどうするかは気になるところでしょう。実際弊社にも現在育児休暇中の社員もおりますし、私としては、育児のために一度仕事を離れて、たとえ10年くらいブランクがあったとしても「また働きたい」という腹を括った強い思いがあれば、受け入れたいと思っています。

■ウィルウェイズが語る、エピソード オブ "社長"

平成18年に岡谷市湊地区を襲った土石流災害。岡谷組はその際にも、災害復旧のために尽力されました。

「あれくらい規模が大きいと本当に大変です。何が困るって、災害復旧をしたくても、一方で他の現場は次の日から通常通りに工事が行われるから、それを止めるわけにはいかないわけですよ。重機や人手も余裕がないので、災害現場へどこから重機や人手を持ってきたらいいのか...。」

「いざという時には連絡を取り合える、そして密に取り合うことが一番」という答えは、こうした経験から生まれたそうです。

また、十数年前に大雪が降った際の対応の経験を活かし、今年2月の大雪の際には1回目の積雪時に排雪をしっかり行うよう市にもアドバイス。2回目に更なる雪が降り、諏訪管内の他の地域が排雪に混乱するなか、岡谷市だけは大きな混乱もなかったとか。

地域の自然災害に対応し続けてきた岡谷組だからこその「災害対応時の知恵」は、社内だけでなく社外にも伝えられ、役立てられてきました。

いざというときに頼りになる。そんな言葉通りの力強さを感じた取材でした。

※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。(2014年9月)

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