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トップインタビュー信州

建築設計

山共建設株式会社

代表取締役社長  降幡 真 氏

■業界の概要と企業の概要

古民家再生。今でこそ広く知られ、多くの建築業者が手掛けるようになった。若い世代が古民家を求めて住むという話も少なくない。しかし今から30年以上前、「古民家再生」という言葉さえなかった時代に、全国に先駆けて本格的に古い民家の再生工事を行ったのがこの山共建設だ。

先代社長が職人たちと作り上げた民家再生の方法論は全国的にも評価され、平成2年には日本建築学会賞を受賞。名実ともにこの分野の日本の第一人者として、フランスのシャイヨ宮殿内にあるフランス国立人類博物館、パリ市内のブローニュの森へと古民家移築を行っている。

「家」が積み重ねてきた歴史をそのままに、今の生活に合わせた形で後世へ残していく。日本建築の良さを次の世代へ受け継ぎ、日本の家族の歴史を繋いでいく仕事がここにはある。

■事業と強みと今後の展開

家の歴史と風格を次の世代へ繋げるために

現在、建築業界では、新しい家を建てることから今ある建築物を「直していく」ことへ、新築からリフォームへという流れに変わってきています。

弊社では「リフォーム」という位置づけではないのですが、古い民家を直すことで、日本建築の代々続いてきた歴史の一部分を担っているという自負はあります。

使い捨て文化が嘆かれる昨今ではありますが、建築業界では今あるものを直して大切に使うという社会の流れに合っていますし、他社が古民家再生を手掛けていない時代から取り組んできた、30年以上の蓄積したノウハウが弊社にはあります。

古い家には歴史があります。それは、人が亡くなっても何代にも渡って積み重なってきたものです。壊してしまうのは簡単ですが、壊してしまうとその家の重みや歴史はそれでなくなってしまいます。日本の木造住宅は、比較的簡単に間取りを変更したりするリフォームができるので、家の歴史を残しながら、現代の生活スタイルに合うように直し、また3代4代と使える家にすることができます。

建築は、これからはストックになっていく時代です。よりよい建築を残していくためにも、古民家を直し、さらに長く住める快適な家づくりをしていきたいと考えています。

試行錯誤から始まった古民家再生

今でこそ、多くの業者が古民家再生を手掛けるようになりましたが、昔はほとんどありませんでした。しかし、「先祖から受け継いだ家を直して使いたい」というニーズは以前からあったのです。弊社が30年以上前にそれに取り組んだのは、そんなお客様の家への思い入れに応えたいという思いからでした。

当初は、見積もりの仕方も分からず、いざ工事に着工して解体してみたら想定していなかった事態に遭遇して苦労したこともありました。

それでも続けてこられたのは、やはり完成した時の感動が大きいからです。そうした試行錯誤のなかで、職人さんと共に手法を確立してきました。それが他社には真似のできない強みだと思っています。

その地方、その家ならではの良さと昔の人の思いを残して

古民家にお伺いすると、どの方も、「うちはそんなに立派じゃないから」とおっしゃいます。でも完成してみると、どの家も先人から受け継いだ、すばらしい古民家が現代生活にマッチした形で蘇ります。

たとえば柱や梁は太いほうがいいと思う方も多いのですが、細ければ細いなりにいい家ができます。そもそも雪が多い地方は豪雪に耐えるために太い柱ですが、信州の家では柱はそんなに太くありません。柱の太さ1つとっても、地方ごとの味わいがあるのです。弊社ではそんなことも説明して、「直せば良い家になりますよ」とお伝えしています。

現代の家はどこも均一に明るく、明暗がありません。昔の家には暗い場所があって、子どもにはそれが怖い場所でした。その感覚が大事だと思いますし、それが昔の家の良さなのです。再生した古民家にも、昔の家と同じく明暗のある家に蘇っています。

弊社の場合は、新築の依頼のお客様でも、そこに古い家があれば「直しませんか?」とご提案しています。古民家もきちんと再生すれば、温かくて住みやすい家になるからです。古民家を解体してしまう場合でも、古い家から一部材料を取り入れることで、その家の歴史や思いを新しい家に受け継ぐことが出来ると考えそのような提案もしています。

家には、その地方、その家ならではの良さがあります。柱、襖、梁で繋がった気候風土にあう日本建築の良さを残しながら、現代の工法を取り入れて住みやすい家を提案していきたいですね。

手で見て触れて、心で感じる建築を

弊社で目指しているのは、長い間住んでみて「よかったな」と思える家です。それは工場生産のものでは生まれない感覚で、手仕事だからこそ、そこに「心」があり、心があるからこそ使い込むほどに味わいが出てきます。

たとえば、この本社事務所は富山の民家を移築再生して25年です。何も手をいれていませんが、全く飽きがきません。きちんとしたものというのは、そういうことだと思います。

そうした家づくりのためにも、弊社では必ず手で触って建築物を確かめます。人間の五感は優れているので、触った時にちょっとした雰囲気の違いなど目で見ただけではわからないものがわかります。だから、手で触って心で感じることで成長できると常々社員にも伝えていますし、職人さんも皆、この手で触れて心で感じる感覚を大切にしています。

昔は、家を建てるのに本当に苦労しました。木材は貴重で大切でした。ですから近所や知人の家が解体されると聞けばその材料を買って、それを運んできて建てたんです。木材を大切にするその思いを考えれば、簡単に壊すわけにはいかない。その思いを何か残したい。そう思っています。

また、今後はこのような私達の家づくりへの思いも次世代に繋げていけるよう、興味を持ってくれた若い世代を育てていきたいと考えています。

■求める人材像は・・・

明るく、何でも自分から話を聞きにいく積極性を

わからないことがあったら、人に聞いていかないと解決できません。自分から聞いていかないと、周りの人間は、何がわからなのか、何に困っているのか、わかりませんから。だからどんどん人に聞いていける明るい人がいいですね。弊社のような育て方ですと、内気な方だと少ししんどいかもしれません(笑)。

でも恥ずかしくても、そこで聞いておかないと、あとでもっと困るのは自分なのです。

また、仕事を進めていくうえでは、「嘘をつかない」のが一番です。たとえば、納期が間に合わないときに、「間に合っていない」と素直に言えて、周囲に協力を求められるかどうか。ここで、嘘をつくともっと大変なことになります。

最近はほとんどなくなりましたが、以前は現場で出来上がったものを壊すことがよくありました。手を抜いた仕事をそのままにすると、お客様に迷惑がかかるからです。基礎工事をやり直したこともあります。恥ずかしいことですが、そこは正直にやっていかないといけません。今までどんなにいいことをしていても、1つダメなことをしてしまうと、そこで社会的信用を失ってしまうからです。

だから、嘘だけはつかない。それを大事にしていける方と一緒に働きたいですね。

■ウィルウェイズが語る、エピソード オブ "社長"

降幡社長は、5年ほど東京の設計事務所で働いていらっしゃったそうです。当時手掛けたのは八景島シーパラダイスや大型ホテルなど、現在の木造住宅とは全く異なる建築物だったとか。

「当時の設計事務所の先生は、建築界で有名な先生でした。日本の建築も柱や梁を見せるという共通点はありますが、当時は木造の『も』の字も詳しく知りませんでした。

スケール感も全く違うものを設計していたので、戻ってきた当初は私が設計すると、大きな家になってしまっていたりして(笑)。苦労しましたよ。」

そんな降幡社長の取材では、木造住宅や家に積み重ねられた歴史を残していきたいという強い思いを感じました。それでも、最初から興味があったわけではないようで...。

「家の歴史なんて、今は皆興味がないでしょう。私だって、最初は興味がなかったんですよ(笑)。でも人の家にいっていろいろ見ているうちに、この歴史っていうのは大変なものだなと思うようになって。

作ろうと思っても簡単には作れないし、捨てようと思ったら、簡単に捨てられる。でも1度壊してしまったら、2度と作れないんですよね。」

山共建設の家づくりは、単に「住む場所を作る」ということではなく、家に受け継がれてきた歴史や思い、日本建築の良さを、今を生きる人や後世の人に心地よい形で残していくという仕事。家づくりの意味や奥深さを改めて強く感じた取材でした。

※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。(2014年9月)

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