自動車・自動車部品
有限会社原製作所
代表取締役社長 原 洋介 氏
■業界の概要と企業の概要
昭和27年、お菓子の製造で創業し、昭和30年には日本初の"インスタントおしるこ"も開発した原製作所。そのスタート地点から、常に新たな分野にチャレンジし続け、今では図面のない実物から非接触で3DCADデータを計測・作成するサービスを展開し、全国に顧客を持っている。
非接触で3DCADデータを作成できることで、ものづくりのスピードは加速し、今までにはなかった課題や発見をすることができる。そのサービスは、全国のものづくりの現場で注目されており、ニーズも増え、競合参入も増えてきている。
お菓子の製造から、最先端の3Dスキャン・リバースモデリングのアウトソーシング事業へ。県内を見渡してもこのような変遷を遂げた企業は、そうないだろう。
■事業と強みと今後の展開
3Dスキャン・リバースエンジニアリングをアウトソーシング事業として
もの作りの現場では3DCADが使われています。今までは3DCADで設計しても実際に作り出した製品は「物」=アナログになります。このときに、3DCADで難しい形が設計できてしまう。ものづくりの技術も発展し、その難しい形を製作する事ができるようになる。しかし、現状の計測設備では計測しきれない形状を作れてしまうため、実際の「物」の検査や加工、計測ができないという問題がありました。
私も前職で3DCADの設計をしていたので、そこに課題を感じていましたし、他の会社も同じように頭を悩ませているはずだと考えていました。
しかしここで3Dスキャニング技術を使うと、アナログの「物」をデジタル化することができ、デジタルの3DCADデータと「物」の差がなくなり、試作や検査の時間を短縮化することができます。自社に計測機械がなくてもそんなサービスがあって利用できれば、モノ作りのスピードアップに貢献できるはず...と思い始めたのが、この3Dスキャン・リバースエンジニアリングのアウトソーシング事業でした。
3DCADの機械自体は20年くらい前からありましたが、計測精度も低く計測をアウトソーシング事業としてやろうという会社はありませんでした。弊社が事業をスタートさせた当時も、同業他社も国内に4~5社程。業界というほどの規模はなく、この仕事自体も大手企業の品質部署が、社内の分だけを計測しているという状況でした。
しかし今は競合の参入も増えてきています。それだけ需要が増えてきているなかで、同業他社も少ない頃から手掛けてきたノウハウと経験が、弊社の強みだと思っています。
ダルマや仏像をどのように計測するか、計測データをどう活かすか
例えばダルマの丸みがどのような曲面か、3DCADのデータではそれが設計値としてあります。これをもの作りで試作するとなると、2次元図面に落として寸法を...とさらなる工程が入り、複雑化していたのですが、3DCADを使えばCADのデータを活用して試作ができるというわけです。
通常の方法で計測すると、歪みや伸びを測るのはとても難しく、それは数値で表現されているので、知識のある人でないと「数字」が何を意味するのかさえもわかりません。
それが3Dスキャンを使うと今までわからなかった形状を「見える化」できて、技術や経験の浅い人でも「全体が歪んでいる」などの問題が一目でわかるようになります。
弊社ではこうした測定技術を生かし、自動車や金型から、フィギュアやダルマ、文化財まで、お客様のニーズに合わせて、様々なものを測定しています。
そして測定するだけでなく、「その後の対策をどうするか」などの提案を+αとしてアドバイスしています。測定によって得られた結果に対し、お客様が持っていない判断材料を提供することが弊社の価値だと考えていますし、それがお客様にリピートしていただける理由にもなっています。
モノづくりの現場で感じた問題点をヒントに生まれた新規事業
現在弊社の主力事業となった3Dスキャン・リバースモデリングのアウトソーシング事業は平成20年に新規事業として始めたものです。
このサービスの必要性と可能性を感じたのは前職の経験が大きいですね。
私は前職で3DCADに出会ったのですが、それまでは二次元の紙で設計するというのがメインだったので、パソコンを使えば初心者でも立体が表現できるというのは大きな衝撃でした。
そしてたまたま前職の顧客先の大手メーカーで、3Dスキャナを現場で使っているのをみて「これは革命的な技術だ」と感じたのです。中小企業では、こうした高価な機械を各企業で導入することはできないからこそ、この部分だけを切り取ってアウトソーシングサービスとして提供したら喜んでもらえるのではないかと。
それで前職を辞めて家業を継ぐために戻ってきたときに、この新規事業を展開することにしたのです。
高まる需要に合わせて、今後は各地に事業所展開も視野に
そして6年経った今、工業製品に限らず、「形」のあるものを扱っているすべてのモノ作りの様々な現場で、3Dスキャン・リバースエンジニアリングに対する需要が高まってきたこともあり、競合が増えてきました。そこで価格競争にならないよう、弊社だけにしかできないサービス、測定だけではないノウハウを強みに、さらに成長させていきたいと考えています。
現在のお客様のほとんどは県外です。各地に出張していますが、現地に拠点があったほうがよりよいサービスが提供できますので、今後は国内に拠点を増やすことも視野に入れています。高まる需要に合わせ、人員も増やし、より多くのお客様の需要に応えられる体制を作りたいですね。
また、形状だけでなく「動き」や「色」など、機械で計測できる分野は広がっています。まだまだ国内では十分なサービス体制が確立されていない分野なので、こうした新しいサービスにもチャレンジしていく予定です。
■求める人材像は・・・
「まず、やってみる」というチャレンジ精神と勢いを
新しいサービスの現場ですから、「まずやってみる」というチャレンジ精神、勢いがとても大切です。
実際の現場でも、「できるかどうかわからないけど、やってみます」という弊社の社員の姿勢がお客様からも評価されています。その姿勢が喜ばれていますし、それで実際にできれば、高く評価されます。
できないかもしれないけれど、やってみる。そして、今までできなかったことができるようになったら、それが嬉しい。その感覚を楽しめる人がいいですね。
また、何よりも自己表現ができる人を求めています。常にチャレンジしている状況ですから、自分が今どう考えている、どういうスタンスでいるというのを思っていることをストレートに言ってくれると会社としてもとてもありがたいのです。
弊社では測定など技術面だけが必要ではなく、社員全員に営業力や会話力が必要になってきます。身につけることは多いですが、それを自分で考えて周囲に聞いたり確認したりしながら、身につけていってほしいのです。
また、文系理系問わず、頭のなかで3次元でのイメージがすぐにできるかどうかというのは、この仕事では大きいですね。例えば、ブロックを渡されて「車を自由に作ってください」と言われた時に、すぐに作れるかどうか。そうした3次元の感覚に慣れている人にはとても面白い仕事だと思います。
■ウィルウェイズが語る、エピソード オブ "社長"
求める人材像として、「自分の思っていることをストレートに表現できる」ことを条件に挙げていた原社長。今の社員も文字通り、思っていることをしっかり伝えてくれるそうで...。
「本当に、社員も言いたいことを言ってきてくれます。私も社長として社員にダメ出しされますよ(笑)。
メールの文章から始まって、『さっきのやりとりは、こうしたほうがいいんじゃないのか?』とか。それこそプライベート的なところまで、ダメ出しを(笑)。もちろん、私もダメ出しをしますけれど。」
お互いにダメ出しを言えるのは、そこに信頼関係があり、自分の意見や価値観の軸をしっかり持っているからこそのもの。
お菓子屋さんから始まって、おしるこの開発をして、鉄工や電気関連の仕事をして、そして今、3Dスキャン・リバースエンジニアリングという新しいサービス手掛ける原製作所の変遷は、中小企業の歴史としてもなかなか珍しいでしょう。
この新しい分野でも果敢に挑戦しようという意識が、言いたいことを言い合える社風につながっているのかもしれないと感じました。
※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。(2014年9月)
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