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トップインタビュー信州

専門店(その他小売)

有限会社小林生花店

代表取締役社長  小林貴明 氏

■業界の概要と企業の概要

思わず目を引く青いバラに、七色のバラ。キラキラ輝くプラチナラメをデコレーションした、プラチナローズ。誰かにプレゼントしたくなるような花は、インターネットを通じて全国へ発送され、全国各地の顧客から支持され、「ぜひまた利用したい」「素敵なお花たちとセンスの良さに心から感謝している」といった声が数多く寄せられている。

そんな小林生花店の下諏訪の店舗には、生花だけでなく輸入雑貨も数多く並んでいる。見ているだけでも楽しくなるような、センスのいい空間。15年前までは、どこにでもある地方の花屋さんだったという小林生花店は、どのようにして生まれ変わったのだろうか。

■事業と強みと今後の展開

エッジの効いた、花屋さんを目指して

都市部の花屋は、目的別に細分化されていて、ギフト用、ブライダル用とそれぞれ店舗があります。一方、地方では、ギフトもブライダルもお葬式もすべて対応し、さらにスコップや肥料の販売もしなければなりません。1つの店に、すべての機能が集約されていることが求められるのです。

弊社もそれは同じですが、こうしてマルチタスクになると個性が失われていきます。そうすると「この花屋で買いたい」と選んでもらえなくなってしまう。そうではなくて、選んでもらえるエッジのきいた生花店にしていこうと。

エッジというと難しいですが、自分が進んで買いたくなるかという感覚が大切だと思っています。私自身、東京で4~5年働いて戻ってきた時の第一印象が「この花屋では買わないな」でしたから(笑)。だから、自分が買いたくなるような花屋にしようというのが最初のスタートでした。

「何かないかな?」とふらっと入ってこられる店に

そこで意識したのが、「何かないかな?」とこれといった目的がなくても入りたくなるような、ワクワクドキドキする店づくりです。

花屋って、「花を買う」という目的意識がないと来店しにくいですよね。でもそういう目的意識がなくてもふらっと入れるように、複合専門業種に転換したいと思いました。そこで輸入雑貨の取り扱いを始めたのです。

また、私も男だから感じるのですが、男性って花屋に入りにくいですし、花束を作るのを待つ時間がとても苦痛なんですよね。花束ができるまでの15分くらいの間、どうしようもない。だから逃げ場というか、隠れ場もある店内を作りたいと思いました。ふらっと入れて、さらに15分の待ち時間が苦痛ではない空間。それが今の下諏訪の店舗です。

「他にはない花」があれば、選んでもらえる理由になる

さらに「この店で」と選んでいただくには、他店とは違う花があることも必要だと思いました。

例えば花を贈るときは、ちょっとでも目をひくもの、少しでもより喜んでもらえるものを贈りたいのが人間の心理です。そこで弊社を選んでほしいと思ったときに、たとえば近所の花屋で3000円の花束に求めるスペックと、松本から諏訪まで来て買う3000円の花束に求めるスペックは違ってきます。

その違いに応えるものがあれば、少し遠くても選んでもらえる店になります。そこで、青いバラやレインボーローズなどのインポートフラワーも取り扱うようになりました。

トレンドを反映するために、仕入れはすべて社員が担当

エッジをきかせるために、工夫しているのは花の仕入れです。まず、世界的な花の流通の中心であるオランダ市場との契約。また長野県の生花店では、松本の市場から仕入れるのが一般的ですが、弊社では東京を中心に大阪、名古屋の市場から取りよせて、トレンドにあった花を仕入れるようにしています。

今では都心部の市場から仕入れる花屋も増えましたが、弊社が始めた15年くらい前は随分珍しがられましたよ。

また、弊社の仕入れは100%社員が行っています。中規模くらいまでの花屋は、オーナーが仕入れるのが常ですが、私はやりません(笑)。それが売り場にトレンドを保つ秘訣です。オーナー1人のアンテナでトレンドを追うよりも、複数の社員のアンテナで情報収集したほうがいいに決まっています。それに現場で接客し、花束を作るのは社員ですから。社員が一番わかっているので、全面的に任せています。

それに花の仕入れは、本当に面白いのです。例えば1億円の売上なら5000万円分の花が買える。市場の臨場感や、誰もが得をするwin-winの雰囲気も味わえる。だからこそ、仕入れを任せることは人材育成にもつながると思っています。

お客様の人生の節目を、センス良く彩れるように

花束や花のアレンジメントは、人生の節目で必要とされます。出産祝い、七五三、小学校や中学校の入学、成人式、結婚式、新築祝いに還暦祝い、そして葬儀と。だから、お花屋さんは儀式人でなければいけないと思っています。

各儀式には、それぞれ個性があり、伝統や文化があります。例えば、結婚式なら二人の門出と両家の結びつきを祝うのが「結婚式の個性」ですし、葬儀なら喪服を着て悲しむことが「葬儀の個性」です。その個性や伝統や文化を踏み外さない、崩さない範囲で、時流を取り込んでセンスのある花で節目を彩っていくのが私達の役目。

当たり前のことですが、それがなかなかできていなかったので、まずは当たり前のことを確実に行うことを主軸にしていきたいですね。古き伝統や文化を守る範囲内で、新たな時流を取り込むという新旧のバランスがしっかりしていれば、これからもお客様から支持していただけると思っています。

社員全員で、当たり前のことを当たり前にできるように

だから弊社の社員教育は「ABC」なんです。「(A)当たり前のことを (B)バカになって (C)ちゃんとやる」と。

当たり前のこととは、受け継がれてきている文化や伝統のこと。また花の世界には、プロとして「花束やアレンジメントが美しく見える当たり前の約束」があります。こうしたプロとしての常識をしっかり持っていること。そういう当たり前のことをきちんとしていきたいなと。当たり前のことって、実はなかなか難しいんですけどね。だからこそ、大事にしたいと思っています。

今後は、「食」をプラスした店舗も視野に

今後の展開としては、複合専門業種を考えています。現在の店舗では、お花とインテリア雑貨を販売していますが、ここに「食」の要素をプラスすると衣食住のミニマリズムができます。花屋はライフスタイルを売るのが仕事。ライフスタイルを提案する花屋としては、「食」も併せて提案していけたら、面白いのではないかと。

イメージとしては、お惣菜があって、それをデリスタイルでワンプレートに盛って、ちょっとした食事と空間を楽しめるような、そんな感じです。

これといった目的がなくても、なんとなく寄ってみたくなる。女性は楽しめて、男性は隠れることができる。そんな店舗の可能性を今後も追及していきたいですね。

■求める人材像は・・・

フローラルデザイナーではなく、フローリストの意識で

素直で誠実で、明るいこと。それが一番です。また、いわゆる「お花屋さん」というイメージで会社を選んでほしくないと思っています。素敵な花束を作ることが仕事ではありませんから。弊社は、「フローラルデザイナー」の集団ではなくて、「フローリスト」なんです。

「フローリスト」とは、人生の節目のお手伝いをしていく、裏方の仕事です。裏方として求められる役割を考えて、熟知していただきたいのです。大切なのはお客様の節目を、お客様に喜んでもらえるように彩ることで、花のアレンジを作ることにこだわって、自分中心になってしまうとダメなんですよ。

そして何より自己成長を求めてきてほしいですね。その思いが一番大切だと思います。

■ウィルウェイズが語る、エピソード オブ "社長"

小林生花店の魅力は、他にはない花のラインナップと、小林社長の個性だと思います。キャリアインタビューに対応してくださった須藤様も、「こんな社長がいるのかと思った」と驚いた人柄は、こんな話からも感じられました。

「六本木の専門学校に行った後、東京で4~5年働いていました。新宿アルタの近くの花屋で、『笑っていいとも』に花を運んだり、歌舞伎町の店舗に花を配達しにいったりしていました。思春期の大事な時期を、とんでもない場所で過ごしちゃいましたね(笑)。

そして戻ってこいと言われたので、戻ってきたんです。そしたら、借金がたくさんあったんですよ。当時の売上の3倍くらい、純資産でいうと5倍くらいの借金があって、もうびっくりしちゃってね。

でもそうなると、失うものが何もない。まさに背水の陣。後ろ盾もなければ、利害関係も縁故も何もない。ある意味、無敵。だから花屋のセオリーから外れない範囲のなかで、ちょっと個性を出せば当たるんです。人が右って言ったら左に、前と言えば後ろに行ってみる。『ばかじゃないのか?』と言われても、それが楽しい。そんな感じでした。」

こうして当時の生花店の常識を覆すようなチャレンジをしてきたからこそ、全国から支持される店へと転換したのでしょう。

自己成長は、その思いさえあればどんな環境でもできます。しかし花のラインナップと同様に、他にはない、他では味わえない楽しい自己成長が、ここにはあるように感じています。

※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。(2014年6月)

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