精密機器
マイクロストーン株式会社
代表取締役社長 白鳥典彦 氏
■業界の概要と企業の概要
人の動きや、機械の振動を計測するセンサ技術を核に持ち、独自のセンサ製品から、そのセンサの計測用の回路ソフトの開発までを一気通貫して手掛ける。その技術は、医療の分野から、製造現場での振動検査まで、多くの大手企業に納入され、幅広く活用されている。その独自性が認められ、2009年には経済産業省から「元気なモノづくり中小企業300社」にも選定。
創業から今年で15年。会社の成長要因は独自の技術力だけでなく、社長の強い思いや縁を大事にする人柄にもあるようだ。
■事業と強みと今後の展開
センサ技術を、安心安全の分野に活かして
弊社の源となるのは、センサ技術です。簡単にいうと「一秒間に何度触れたか」という角度を測るもので、現在は次のような分野で活用されています。
まず1つめが、医療の分野。現在、病院の理学療法の現場で使っていただいています。センサを無線で体につけて、リハビリ前後の腕や足の角度変化を計測するのです。これで、リハビリで肘がどれくらい曲がるようになったのか、どれくらい体が回復したのかがわかるようになります。この理学療法分野の動作解析については、全国でトップシェアを誇っています。
またもう1つは機械振動の計測です。工業用ロボットの計測など、自動車関連分野で活かされています。精密部品を製造する際は、わずかな振動が狂いになりますから、その振動を計測することが必要になってくるのです。
こうしたセンサ技術に関してセンサ製品から、その計測の回路ソフトウェアまで一気通貫して開発しているのが弊社の強みです。
また、さらにファンタジー事業として光るうちわ、クリスタルツリーといった製品も展開しています。この光るうちわも振動の技術の応用で、アメリカ、中国、韓国、台湾、日本で特許を取得しています。コンサートグッズとして、光るうちわの提供ができるのは弊社だけなんですよ。
センサ技術に対する思い...重なった3つのきっかけで起業
私自身、このセンサ技術の開発を長年しておりまして、前職では大手企業でセンサデバイスの開発をしていました。ところが事業撤退になり、新たに液晶開発をすることになったのです。しかしどうしてもセンサ技術をやりたい。その思いが強くありました。
そして同じころ、父親が入院しました。病院で話を聞いていると、外科的手術をした患者さんが入院中に糖尿病になることが多いそうなのです。寝たきりで運動量が減るからなんですね。こうした現状も、患者さんがどういう一日を過ごしたかをセンサ技術で記録すれば、健康管理に役立つはずだと思ったのです。
さらに時期を同じくして、ジャイロセンサ分野の第一人者である、山形大学の教授からお誘いを受けたのです。大学院に入って、本格的な研究を一緒にやらないかと。アメリカに負けないものを作ろうと。特許の実績があったので、論文さえあれば修士課程を免除にして博士課程から研究させてもらえたので、会社に勤めながら大学院に通い始めました。しかし土日が全くなく、仕事を続けながらの難しさも感じてきました。
こうした3つの出来事が重なり、1998年に大学院に入学し、翌年に会社を辞めて起業しました。家族はもちろん、大反対でした(笑)。
一生は一度しかない。後悔しないためにも、やるしかない。
もちろん前職に残ることも考えました。ずっと新規事業の中心的存在で仕事をさせてもらい、センサ事業の撤退時にも、よりいいポジションも提示していただきましたから。でもそこに残ってはおかしいと感じたのです。
一生は一度しかない。やるなら今しかない。3つのことが同時に起こったのは偶然ではない、必然なのだという思いがありました。まるで後ろから押されているようにも感じたのです。そして、仕事を選ばなければ食べていくことはできると思ったので、思い切って起業しました。今は、本当にすべてがラッキーだったと思っています。
お客様の声を聞いて、喜んでもらえることが第一
弊社ではセンサも評価ソフトも自分たちで作っています。だからお客様が抱える問題に対する、問題解決能力は高いと自負しています。自社以外のセンサがお客様のためになるときには、もちろんそちらを提案します。
当初はやはり自社のセンサを使ってほしいという思いもありました。しかし、10年前に大変な時期がありました。それは景気などの外的要因ではなく、お客様の声をきちんと聞かなかったことが原因でした。だからこそお客様の声を聞いて、自社製品にこだわらず、お客様の問題解決になるような製品を使っていただくのが一番ハッピーなのだと実感したのです。
一人ひとりがそれぞれの得意分野を出し合う、八ヶ岳戦略で
よく経営は、人・もの・お金・情報と言われますが、これは同列ではありません。すべてのベースは人です。だから人材育成はとても重要だと考えています。
私自身も欠点だらけですし、人には向き不向きがあって、長所も短所もある人の集まりで会社は成り立っています。だから、一人ひとりの長所が輝く状態を社内で作ってあげるのがとても大切だと思っています。成績表でいうとオール5である必要はないのです。オール2やオール3でも、一教科だけ5があれば。そうして「5」の部分だけ集めれば、全体でみると大手企業にも勝てます。
弊社ではこれを八ヶ岳戦略といっています。人それぞれの得意分野を合わせて、皆で知恵を合わせることで強い会社を作っていきたいと考えています。
また、能力を発揮するためにも、誠実であることがとても大切ですね。能力が仮に3くらいしかなかったとしても、誠実であれば周りの人が協力してくれて4とか5になります。誠実に対応していくと、人間力が向上していく。人間力が向上していくと、その人の力以上のものが備わっていく。これが弊社で目指す人材育成です。
お客様に感動してもらうことこそが、大事
弊社の製品は他にはないものです。だから、単なる工業製品ではなくて、お客様に感動してもらうことが大切なのです。「これを待っていたんだよ!」「これなんだよ!」と言っていただけるもの。そういう製品、ソリューションを提供していきたいですね。
今もこれから発売する新商品が3つくらい出来上がっています。これが本当に面白い。お客様にも喜んでもらえるのではないかと、今からワクワクしています。
弊社では「ご縁経営」と言っていますが、ご縁があった方となるべく長いおつきあいをしていきたいと考えています。ご縁を大切に、ご縁があったお客様に喜んでいただけるように。その姿勢を今後もずっと大事にしていきます。
■求める人材像は・・・
愛嬌と素直さがあればびっくりするほど成長します
求める人材は、まず素直であることです。素直な方はびっくりするほど成長します。
そして、誠実で愛嬌がある人。今社内で活躍しているのも、誠実で愛嬌がある人です。愛嬌があるというのは、運が強い人ですね。運が強いというのは、人にかわいがってもらえる人。これがとても大切なんです。
人のために働いていると、周りが助けてくれます。反対に愛嬌がないと、失敗の人生に自分から零れ落ちていってしまいます。誠実で愛嬌があるというのは仕事をしていく上で本当に重要だと思っています。そんな方とぜひ一緒に仕事をしていきたいですね。
■ウィルウェイズが語る、エピソード オブ "社長"
取材時、社長の本棚には「経営のヒント」という背表紙のファイルが並んでいました。技術者出身の白鳥社長にとって、当初「経営」は不慣れな分野であったようです。
「最初は"思い"しかなかったんですよ。でもね、強く思っていれば"思い"って実現するんです。本当です。だっておかしいと思いませんか?私なんて、自宅の六畳間でパソコン一台しかなかったんですよ。それが多くのいろんな人のご縁でこういう会社ができた。お客様も増えてきた。
普通の方は、外的要因のせいにして途中であきらめてしまうんです。不況だとか、お金がないとか。だから成功者が少ない。しかし、本当は"思い"が実現しないのは自分の心が定まっていないという内的要因。"思い"が弱いか、持続できなかったというだけ。だから続けることが大事なんです。」
そう語る白鳥社長からは、明るくて強いエネルギーを感じました。あなたも直接、白鳥社長にお会いしたら、"思い"を実現させたこのエネルギーを間違いなく実感するでしょう。それは企業を選ぶ大きな要因の一つになるに違いありません。
※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。(2014年6月)
そんなマイクロストーン株式会社で働く社員の・・・
開発生産部 野澤秀隆さん | |
営業部 赤塩藤子さん |